「WCAG 2.1」達成基準候補の日本語訳

インフォアクシアの植木です。ブログのエントリーは、なんと約1年半ぶり! 2017年も終わろうとしていますが、2018年はブログでも情報を発信していけたらと考えています。

さて、今回は「WCAG 2.1」のワーキングドラフトについてです。W3CのAG(Accessibility Guidelines)ワーキンググループに参加しているのですが、ここでシェアするのは、ワーキンググループでの作業用に、個人的に翻訳していたものになります。

ドラフトへの最終の意見受付は、2018/1/12まで

2017年12月7日に「WCAG 2.1」のワーキングドラフトが更新されました。「WCAG 2.1」は、2018年1月に勧告候補、そして同6月にはW3C勧告となるスケジュールで策定が進められています。

この2017年12月7日付のワーキングドラフトは、勧告候補になる一歩手前の「ラストコール」という位置付けになり、ワーキングドラフトに対して意見を提出できるのは、これが最後となります。意見受付は、2018年1月12日までとなっています。

このエントリーでは、そのワーキングドラフトで提案されている「WCAG 2.1」の新しい達成基準候補について、日本語訳したものを皆さんとシェアします。時間は限られていますが、一人でも多くの方が意見を提出できるきっかけになれば幸いです。

なお、意見や質問の提出方法は、以下のいずれかとなります。

原則として、英語で提出する必要がありますが、日本語でもかまいません。日本をはじめ、英語圏以外からも意見や質問が少しでも多く寄せられることをワーキンググループでも期待しています。英語が苦手な方は、日本語でコメントをお送りください! あとはワーキンググループ内で私が何とかしますので、次のようなコメントを遠慮せずに送っていただけたらと思います。

  • 達成基準 X.X.Xの「○○○○○」の意味がよく分からない!
  • 達成基準 Y.Y.Yの「○○○○○」は「△△△△△△△」ということ?
  • 達成基準 Z.Z.Zは、レベル Aではなく、レベル AAにすべきだ!

メインテーマは、モバイル、認知・学習障害、ロービジョンの3つ

W3CのAGワーキンググループでは、「WCAG 2.0」で十分にカバーできていなかった次の3つのカテゴリについて、新しい達成基準を検討するタスクフォース(作業部会)を作りました。

それぞれのタスクフォースは、「WCAG 2.0」が対処できていない問題を解決するために、ユーザーの視点から新しい達成基準候補を提案してきました。2017年12月7日付のワーキングドラフトでは、「WCAG 2.1」に新たに追加されようとしている達成基準候補が、次のように全部で20個あります。

WCAG 2.1の新しい達成基準候補の分布
適合レベル モバイル 認知・学習 ロービジョン 合計
レベル A 5 1 0 6
レベル AA 3 2 4 9
レベル AAA 2 3 0 5
合計 10 6 4 20

それでは、新しい達成基準候補の日本語訳をシェアしてまいります。

  • なお、各達成基準を含むワーキングドラフトの正式版は、あくまでもW3Cのサイトにある英語版であり、この文書には翻訳上の間違い、又は不適切な訳語が含まれている可能性がありますのでご注意ください。
  • 以下の日本語訳は、予告なく修正されることがあります。

レベル Aの新しい達成基準候補の日本語訳

達成基準 2.2.6 アクセシブルな認証[レベル A]

認証プロセスにとって必要不可欠なステップが、情報を記憶したり記録したりすることに依存する場合は、以下のいずれかの要件を満たす。

  • 必要不可欠なステップに対して、情報の記憶や記録に依存しない代替がある。
  • 情報の記憶や記録に依存しない認証情報リセットのプロセスがある。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は例外とする

  • ユーザが簡単にアクセスできる基本的な個人特定のための情報、例えば氏名、住所、メールアドレス、及び身分証番号又は社会保障番号(マイナンバー)などを使用している場合。
  • 法規制の要件のために、これが達成可能でない場合。

「WCAG 2.1」編集者注

この達成基準は前回のワーキングドラフトから変更されていない。すでに受け取ったコメントについての議論は継続中である。ワーキンググループでは、この達成基準のこのバージョン、または現在のコンセンサスではない代替バージョンに対する追加のコメントを募集している。この議論の成り行きに関心がある方は、アクセシブルな認証の問題点に関する議論をフォローしてほしい。

達成基準 2.2.6の原文

2.2.6 Accessible Authentication

Essential steps of an authentication process which rely upon recalling or transcribing information have one of the following:

  • alternative essential steps, which do not rely upon recalling or transcribing information
  • an authentication-credentials reset process, which does not rely upon recalling or transcribing information

Except for when any of the following are true:

  • Authentication process involves basic personal identification information to which the user has easy access, such as name, address, email address and identification or social security number.
  • This is not achievable due to legal requirements.

達成基準 2.4.11 文字キーのショートカット[レベル A]

1つ又は複数の文字キーのみで構成されるキーボードショートカットがコンテンツに実装されている場合は、それをオフにするか、又は文字キー以外のキーを少なくとも一つ含むショートカットに変更するメカニズムが存在する。ただし、ユーザインタフェース コンポーネントにフォーカスが置かれている場合のみ、そのキーボードショートカットがアクティブになる場合は例外とする。

用語定義「キーボードショートカット」

1つ又は複数のキーを押すことによってアクションを起動する代替の手段

用語定義「文字キー」

印刷可能なUnicodeのコードポイント (符号位置)、またはキーボード上の印刷可能な文字。アルファベットの大文字と小文字、句読点、数字、記号などが含まれる。
スペースキーとEnterキーは、文字ではなく空白のスペースを返すことから、文字キーではない。

達成基準 2.4.11の原文

2.4.11 Character Key Shortcuts

If a keyboard shortcut consisting entirely of one or more character keys is implemented in content, then a mechanism is available to turn it off or to remap it to a shortcut that can use at least one non-character key, unless the keyboard shortcut for a user interface component is only active when that component has focus.

達成基準 2.4.12 名前(name)のラベル[レベル A]

ラベルを伴うユーザーインタフェース コンポーネントにテキスト又は文字画像が含まれている場合、その提示されたテキストが名前(name)に含まれている。

注記

ベストプラクティスは、ラベルのテキストを名前の最初に使用することである。

達成基準 2.4.12の原文

2.4.12 Label in Name

For user interface components with labels that include text or images of text, the name contains the text presented.

達成基準 2.5.1 ポインタのジェスチャ[レベル A]

マルチポイントまたは軌跡をベースとしたジェスチャを使って操作する機能はすべて、シングルポインタで操作することができる。ただし、マルチポイント又は軌跡をベースとしたジェスチャが必要不可欠である場合は例外とする。

用語定義「シングルポインタ」

画面との1か所の接触点
これは、マルチタッチの反対語である。ポインタには、マウスカーソル、ペン、タッチ (マルチタッチを含む)、又は他のポインティング入力デバイスによって画面上でなされる1か所または複数の接触点が含まれる。このモデルにより、ユーザーがどのハードウェアを使用しているかにかかわらず上手く機能するサイトやアプリケーションを作成しやすくなる。デバイス特有の対応が望ましい場合は、ポインタイベント [pointerevents] 仕様にも確認すべきプロパティが定義されている。

注記

この要件は、ポインタのジェスチャを解釈するウェブコンテンツを対象としている (ユーザーエージェントや支援技術の操作に必要なジェスチャは対象としていない)。

達成基準 2.5.1の原文

2.5.1 Pointer Gestures

All functionality which uses multipoint or path-based gestures for operation can be operated with a single pointer, unless a multipoint or path-based gesture is essential.

達成基準 2.5.2 ポインタのキャンセル[レベル A]

シングルポインタを使って操作できる機能は、以下の要件の少なくとも1つを満たす。

ダウンイベントがない
機能を実行する目的でポインタのダウンイベントを使用していない。
中止または元に戻すことができる
機能を完了させる目的にはアップイベントを使用し、かつ機能の完了前にを中止する、又はか機能の完了後に元に戻すためのメカニズムが存在する。
アップイベントで戻すことができる
アップイベントを使うことで、先行したダウンイベントの結果を元に戻すことができる。
必要不可欠である
ダウンイベントによって機能を完了させることが必要不可欠である。

用語定義「シングルポインタ」

画面との1か所の接触点
これは、マルチタッチの反対語である。ポインタには、マウスカーソル、ペン、タッチ (マルチタッチを含む)、又は他のポインティング入力デバイスによって画面上でなされる1か所または複数の接触点が含まれる。このモデルにより、ユーザーがどのハードウェアを使用しているかにかかわらず上手く機能するサイトやアプリケーションを作成しやすくなる。デバイス特有の対応が望ましい場合は、ポインタイベント [pointerevents] 仕様にも確認すべきプロパティが定義されている。

用語定義「ダウンイベント」

ポインタのトリガが押された時に生じるプラットフォームのイベント。
ダウンイベントは、プラットフォームによっては「タッチスタート」や「マウスダウン」などの異なる名称で呼ばれている場合がある。

用語定義「アップイベント」

ポインタのトリガがリリースされた時に生じるプラットフォームのイベント。
アップイベントは、プラットフォームによっては「タッチエンド」や「マウスアップ」などの異なる名称で呼ばれている場合がある。

達成基準 2.5.2の原文

2.5.2 Pointer Cancellation

For functionality which can be operated using a single pointer, at least one of the following is true:

No Down-Event
The down-event of the pointer is not used to execute any part of the function;
Abort or Undo
Completion of the function is on the up-event, and a mechanism is available to abort the function before completion or undo the function after completion;
Up Reversal
The up-event reverses any outcome of the preceding down-event;
Essential
Completing the function on the down-event is essential.

達成基準 2.6.1 動作による起動[レベル A]

デバイスの動作やユーザの動作で操作できる機能が、ユーザーインタフェース コンポーネントでも操作でき、かつ予期しない起動を防ぐために無効化することができる。ただし、以下の場合は例外とする。

アクセシビリティがサポートされている
その動作が、キーボード、ポインタ、または支援技術を操作するのに使われている。
必要不可欠である
その動作が機能にとって必要不可欠であり、これを無効化すればアクティビティを無効化してしまう。

達成基準 2.6.1の原文

2.6.1 Motion Actuation

Functionality which can be operated by device motion or user motion can also be operated by user interface components and can be disabled to prevent accidental actuation, except when:

Accessibility Supported
The motion is used to operate a keyboard, pointer, or assistive technology;
Essential
The motion is essential for the function and doing so would invalidate the activity.

レベル AAの新しい達成基準候補の日本語訳

達成基準 1.3.4 共通した(or 一般的な)目的の特定[レベル AA]

マークアップ言語を使って実装されたコンテンツでは、「ユーザーインタフェース コンポーネントの共通目的」セクションに記載された目的を果たす全てのユーザーインタフェース コンポーネントに関して、その目的のはプログラムによる解釈が可能である。

達成基準 1.3.4の原文

1.3.4 Identify Common Purpose

In content implemented using markup languages, for each user interface component that serves a purpose identified in the Common Purposes for User Interface Components section, that purpose can be programmatically determined.

達成基準 1.4.10 リフロー[レベル AA]

コンテンツは、320 CSS ピクセルに相当する幅で、情報や機能を損なうことなく、かつ2次元のスクロール(縦・横両方のスクロール)を必要とせずに、閲覧できる。ただし、機能や意味を保つために2次元のレイアウトが必要なコンテンツ部分は例外とする。

注記

320 CSS ピクセルは、1280 CSS ピクセル幅を 400% ズームで見た場合の最初の表示幅に相当する。横方向のスクロールを意図してデザインされているウェブページの場合は、320 ピクセルを幅ではなく高さとして解釈すべきである。

注記

2次元のレイアウトを必要とするコンテンツの例としては、画像、マップ、図解、ビデオ、ゲーム、プレゼンテーション、データテーブル、およびコンテンツを操作している間にツールバーを表示しておく必要のあるインタフェースが挙げられる。

達成基準 1.4.10の原文

1.4.10 Reflow

Content can be presented at a width equivalent to 320 CSS pixels without loss of information or functionality, and without requiring scrolling in two dimensions, except for parts of the content which require two-dimensional layout for usage or meaning.

達成基準 1.4.11 グラフィックのコントラスト[レベル AA]

以下の視覚的提示には、隣接した色との間で少なくとも3:1のコントラスト比がある。

ユーザーインタフェース コンポーネント
アクティブなユーザーインタフェース コンポーネントの状態と境界線を示すための視覚的な情報。ただし、そのコンポーネントの見た目が、ユーザーエージェントによって提示されていてき、かつコンテンツ制作者が変更していない場合は例外とする。
グラフィカルオブジェクト
コンテンツを理解するのに必要なグラフィック部分。ただし、そのグラフィック特有の提示が、情報を伝えるうえで必要不可欠な場合は例外とする。

「WCAG 2.1」編集者注

ワーキンググループでは、画像を評価する際に、コンテンツを理解するのに必要不可欠な部分を見極めるうえでの問題点、および「解説書 (Understanding)」がこの問題点の解決法を明確に説明しているかどうかについて、フィードバックを募集している。

達成基準 1.4.11の原文

1.4.11 Graphics Contrast

The visual presentation of the following have a contrast ratio of at least 3:1 against adjacent color(s):

User Interface Components
Visual information used to indicate states and boundaries of active user interface components, except where the appearance of the component is determined by the user agent and not modified by the author;
Graphical Objects
Parts of graphics required to understand the content, except when a particular presentation of graphics is essential to the information being conveyed.

達成基準 1.4.12 テキストの間隔[レベル AA]

ユーザーエージェントによるテキストのスタイルプロパティの設定を認める技術を使用している場合は、以下のすべての設定をして、かつ他のスタイルプロパティをまったく変更しない状態でも、コンテンツや機能が失われない。

  • 行の間隔 (行送り) をフォントサイズの少なくとも1.5倍に設定する
  • 段落の間隔をフォントサイズの少なくとも2倍に設定する
  • 字の間隔 (字送り) をフォントサイズの少なくとも0.12倍に設定する
  • 単語の間隔をフォントサイズの少なくとも0.16倍に設定する

「WCAG 2.1」編集者注

ワーキンググループでは、テキストブロックの外にあり、この達成基準を満たすことが不可能なテキストコンテンツの例を募集している。この達成基準の適用対象は、実装テスト次第では狭められる可能性がある。

用語定義「スタイルプロパティ」

ユーザーエージェントがコンテンツ要素を提示する際 (画面、音声スピーカー、点字ディスプレイなど) の提示方法 (フォント、カラー、サイズ、位置、パディング、音量、合成音声の音調など) を値によって指定するプロパティ。
スタイルプロパティには、いくつかのパターンが考えられる。

  • ユーザーエージェントのデフォルトのスタイル: コンテンツ制作者やユーザがスタイルを指定しない場合は、ユーザーエージェントのデフォルトのスタイルプロパティが使用される。ウェブコンテンツ技術のなかには、デフォルトの提示方法を指定している技術とそうでない技術がある。
  • コンテンツ制作者のスタイル: コンテンツ制作者がコンテンツの一部として設定するスタイルプロパティ(インラインスタイル、コンテンツ制作者のスタイルシートなど)。
  • ユーザーのスタイル: ユーザーが設定するスタイルプロパティ(ユーザーエージェントのインタフェース設定やユーザーのスタイルシートなど)。

達成基準 1.4.12の原文

1.4.12 Text Spacing
If the technologies being used allow the user agent to set text style properties, then no loss of content or functionality occurs by setting all of the following and by changing no other style property:

  • Line height (line spacing) to at least 1.5 times the font size;
  • Spacing underneath paragraphs to at least 2 times the font size;
  • Letter spacing (tracking) to at least 0.12 times the font size;
  • Word spacing to at least 0.16 times the font size.

達成基準 1.4.13 ホバーまたはフォーカスで表示されるコンテンツ[レベル AA]

ポインタホバー(マウスオーバーなど)やキーボードフォーカスによって追加コンテンツが表示される場合は、以下の要件を満たす。

非表示にすることができる
ポインタホバーやキーボードフォーカスを動かさずに追加コンテンツを非表示にするメカニズムが存在する。ただし、追加コンテンツが入力エラーを伝える場合は例外とする。
ホバーすることができる
ポインタホバーによって追加コンテンツが表示される場合は、ポインタをそのコンテンツに動かすことができる。
表示が継続される
ホバーやフォーカスが解除される、ユーザが非表示にする、又はその情報が有効でなくなるまでは、追加コンテンツが表示され続ける。

例外:追加コンテンツの視覚的提示がユーザーエージェントによって制御されていて、かつコンテンツ制作者が変更していない場合は例外とする。

注記

ユーザーエージェントによって制御されている追加コンテンツの例としては、HTMLのtitle属性を使って作られているブラウザのツールチップが挙げられる。

注記

ホバー時やフォーカス時に表示されるカスタムツールチップ、サブメニュー、他の非モーダルポップアップは、この達成基準の適用対象となる「追加コンテンツ」の例である。

達成基準 1.4.13の原文

1.4.13 Content on Hover or Focus

When pointer hover or keyboard focus triggers additional content to become visible, the following are true:

Dismissable
A mechanism is available to dismiss the additional content without moving pointer hover or keyboard focus, unless the additional content communicates an input error;
Hoverable
If pointer hover can trigger the additional content, then the pointer can be moved to hover the additional content;
Persistent
The additional content remains visible until the hover or focus trigger is removed, the user dismisses it, or its information is no longer valid.

Exception: The visual presentation of the additional content is controlled by the user agent and is not modified by the author.

達成基準 2.2.7 割り込み(最低限)[レベル AA]

割り込みやコンテンツの変更を延期または抑制するメカニズムが簡単に利用できる。ただし、割り込みやコンテンツの変更がユーザによってリクエストされた場合、または緊急を要する場合は例外とする。

用語定義「簡単に利用できる(簡単に利用できるモードまたは設定)」

以下の要件の少なくとも1つを満たす状態。

  • 非常に幅広い範囲にわたって一度設定するだけでよい (オペレーティングシステムの標準を使う、可能な場合はISO 9241-112 [[ISO_9241-112]] や GPII [GPII] から設定するなど)。
  • 相互運用性のある方法で、また一連のウェブページの範囲にわたって、設定を保存または変更するオプションがある。
  • 必要となり得るすべての画面から到達可能で、その経路及びコントロールがこの文書のすべての達成基準を満たしている。

「WCAG 2.1」編集者注

この達成基準は前回のワーキングドラフトから変更されていない。すでに受け取ったコメントについての議論は継続中である。ワーキンググループでは、この達成基準のこのバージョン、または現在のコンセンサスではない代替バージョンに対する追加のコメントを募集している。この議論の成り行きに関心がある方は、割り込み (最低限) の問題点に関する議論をフォローしてほしい。

達成基準 2.2.7の原文

2.2.7 Interruptions (Minimum)

A mechanism is easily available to postpone and suppress interruptions and changes in content, unless they are initiated by the user or involve an emergency.

達成基準 2.5.3 ターゲットのサイズ[レベル AA]

ポインタ入力のターゲットのサイズが 44 × 22 CSS ピクセル以上である。ただし、以下の場合は例外とする。

同等のものが存在する
そのターゲットと同等のリンクまたはコントロールが同じページに 44 × 22 CSS ピクセル以上のサイズで存在する。
インラインである
そのターゲットが文章またはテキストブロック内に存在する。
ユーザーエージェントのコントロールである
ターゲットのサイズがユーザーエージェントによって制御されていて、かつコンテンツ制作者が変更していない。
必要不可欠である
そのターゲットを特定の方法で提示することが、情報伝達にとって必要不可欠である。

用語定義「ポインタ入力」

マウス、ペン、タッチ接触のように、画面上の特定の (1つまたは複数の) 地点を指すことができる入力デバイス。
「ポインタイベント レベル 2」のポインタの定義も参照できる

用語定義「ターゲット」

ディスプレイ上でタッチ動作を受け付けるディスプレイ領域。
同じ動作をしたり、や同じページへ移動したりしないを導かない別のタッチのターゲット部分が重なっていて、タッチ動作を受け付けない場合は、その部分は、サイズ測定の観点からはタッチのターゲットと見なされない。

「WCAG 2.1」編集者注
ワーキンググループで検討中の修正案
ディスプレイ上でポインタ動作を受け付ける領域。
同じ動作をしたり、同じページへ移動したりしない別のターゲット部分が重なっていて、ポインタ動作を受け付けない場合は、その部分は、サイズ測定の観点からはターゲットと見なされない。

用語定義「CSS ピクセル」

約 0.0213 度の視野角。
CSS ピクセルは、CSS において長さと測定に使われる規範的な測定単位である。この単位は密度非依存で、ディスプレイに存在する実際のハードウェアのピクセルとは異なる。ユーザーエージェントとオペレーティングシステムは、CSS ピクセルが「CSS の値と単位のモジュール レベル 3」の参照ピクセル [css3-values] に合わせてできるだけ近く設定されていることを確認すべきである。この参照ピクセルは、ディスプレイの実寸法と予想される使用距離 (コンテンツ制作者では決定できない要因) を考慮して策定されている。

達成基準 2.5.3の原文

2.5.3 Target Size

The size of the target for pointer inputs is at least 44 by 22 CSS pixels except when:

Equivalent
The target is available through an equivalent link or control on the same page that is at least 44 by 22 CSS pixels;
Inline
The target is in a sentence or block of text;
User Agent Control
The size of the target is determined by the user agent and is not modified by the author.
Essential
A particular presentation of the target is essential to the information being conveyed;

達成基準 2.6.2 表示の向き[レベル AA]

コンテンツが、その表示及び操作を縦向き(ポートレート)または横向き(ランドスケープ)などの単一の向きに制限しない。ただし、その表示の向きが必要不可欠な場合は例外とする。

注記

単一の表示の向きが必要不可欠な例としては、銀行の小切手、ピアノのアプリケーション、プロジェクタやテレビ向けのスライド、バイナリ表示が使用できないバーチャルリアリティのコンテンツなどが挙げられる。

達成基準 2.6.2の原文

2.6.2 Orientation

Content does not restrict its view and operation to a single display orientation, such as portrait or landscape, unless a specific display orientation is essential.

達成基準 3.2.6 ステータス変更[レベル AA]

マークアップ言語を使って実装されたコンテンツでは、ステータスメッセージは、役割(role)又はプロパティを通してプログラムによる解釈が可能であり、フォーカスを受けとらなくても支援技術によってユーザに提示することができる。

「WCAG 2.1」編集者注

ワーキンググループでは、複雑なゲームのシナリオにおけるこの達成基準の実行可能性と適用可能性についてのコメントを募集している。

用語定義「ステータスメッセージ」

コンテキストの変化ではなく、コンテンツにおける変化で、アクションの成否または結果、アプリケーションの処理待ち状態、プロセスの進捗、またはエラーの存在に関する情報をユーザに提供する。

達成基準 3.2.6の原文

3.2.6 Status Changes

In content implemented using markup languages, status messages can be programmatically determined through role or properties such that they can be presented to the user by assistive technologies without receiving focus.

レベル AAAの新しい達成基準候補の日本語訳

達成基準 1.3.5 コンテキスト情報[レベル AAA]

マークアップ言語を使って実装されたコンテンツでは、コントロール、シンボル、領域のコンテキスト情報は、公開されている(公的に利用可能な)語彙を使って、プログラムによる解釈が可能である。

用語定義「コンテキスト情報」

オブジェクトの意味を説明する情報。
これには、オブジェクトの目的、プロセス内での位置、他のオブジェクトやプロセスとの関係などが含まれる。

「WCAG 2.1」編集者注

この達成基準は前回のワーキングドラフトから変更されていない。すでに受け取ったコメントについての議論は継続中である。ワーキンググループでは、この達成基準のこのバージョンに対する追加のコメントを募集している。この議論の成り行きに関心がある方は、コンテキスト情報の問題点に関する議論をフォローしてほしい。

達成基準 1.3.5の原文

1.3.5 Contextual Information

In content implemented using markup languages, contextual information for controls, symbols, and regions can be programmatically determined using a publicly available vocabulary

達成基準 2.2.8 タイムアウト[レベル AAA]

ユーザーの無操作によりデータが失われる場合は、無操作があとどれだけ続くとデータが失われるかをユーザに警告する。ただし、ユーザーの無操作の時間が20 時間以上になるまではデータが保持される場合は例外とする。

用語定義「ユーザーの無操作」

ユーザーがいかなる操作も行わない時間が続くこと。そのトラッキングの方法は、ウェブサイトやアプリケーションによって決定される。

注記

プライバシー関連の規制により、ユーザーを認証する前、およびユーザーのデータが保存される前に、ユーザーからの明示的な同意が必要になる可能性がある。ユーザーが未成年の場合は、ユーザーからの明示的な同意は、ほとんどの国や地域で要請することができない。この達成基準に適合するためのアプローチとしてデータ保存を検討する際は、プライバシーの専門家や弁護士に相談するのが望ましい。

達成基準 2.2.8の原文

2.2.8 Timeouts

Where data can be lost due to user inactivity, users are warned about the estimated length of inactivity that generates the data loss, unless the data is preserved for a minimum of 20 hours of user inactivity.

達成基準 2.2.9 インタラクションからのアニメーション[レベル AAA]

ユーザーの動作によって起動する必要不可欠ではないアニメーションについては、アニメーションを無効にしても動作を実行できるメカニズムが存在する。

「WCAG 2.1」編集者注

この達成基準は前回のワーキングドラフトから変更されていない。すでに受け取ったコメントについての議論は継続中である。ワーキンググループでは、この達成基準のこのバージョンに対する追加のコメントを募集している。この議論の成り行きに関心がある方は、インタラクションからのアニメーションの問題点に関する議論をフォローしてほしい。

達成基準 2.2.9の原文

2.2.9 Animation from Interactions

For non-essential animations triggered by a user action, there is a mechanism to disable the animations yet still perform the action.

達成基準 2.5.4 ターゲットのサイズ (高度)[レベル AAA]

ポインタ入力のターゲットのサイズが 44 × 44 CSS ピクセル以上である。ただし、以下の場合は例外とする。

同等のものが存在する
そのターゲットと同等のリンクまたはコントロールが同じページに 44 × 44 CSS ピクセル以上のサイズで存在する。
インラインである
そのターゲットが文章またはテキストブロック内に存在する場合は、22 × 22 CSS ピクセル以上である。
ユーザーエージェントのコントロールである
ターゲットのサイズがユーザーエージェントによって制御されていて、かつコンテンツ制作者が変更していない。
必要不可欠である
そのターゲットを特定の方法で提示することが、情報伝達にとって必要不可欠である。

用語定義「ポインタ入力」

マウス、ペン、タッチ接触のように、画面上の特定の (1つまたは複数の) 地点を指すことができる入力デバイス。
「ポインタイベント レベル 2」のポインタの定義も参照できる

用語定義「ターゲット」

ディスプレイ上でタッチ動作を受け付けるディスプレイ領域。
同じ動作をしたり、や同じページへ移動したりしないを導かない別のタッチのターゲット部分が重なっていて、タッチ動作を受け付けない場合は、その部分は、サイズ測定の観点からはタッチのターゲットと見なされない。

「WCAG 2.1」編集者注
ワーキンググループで検討中の修正案
ディスプレイ上でポインタ動作を受け付ける領域。
同じ動作をしたり、同じページへ移動したりしない別のターゲット部分が重なっていて、ポインタ動作を受け付けない場合は、その部分は、サイズ測定の観点からはターゲットと見なされない。

用語定義「CSS ピクセル」

約 0.0213 度の視野角。
CSS ピクセルは、CSS において長さと測定に使われる規範的な測定単位である。この単位は密度非依存で、ディスプレイに存在する実際のハードウェアのピクセルとは異なる。ユーザーエージェントとオペレーティングシステムは、CSS ピクセルが「CSS の値と単位のモジュール レベル 3」の参照ピクセル [css3-values] に合わせてできるだけ近く設定されていることを確認すべきである。この参照ピクセルは、ディスプレイの実寸法と予想される使用距離 (コンテンツ制作者では決定できない要因) を考慮して策定されている。

達成基準 2.5.4の原文

2.5.4 Target Size (Enhanced)

The size of the target for pointer inputs is at least 44 by 44 CSS pixels except when:

Equivalent
The target is available through an equivalent link or control on the same page that is at least 44 by 44 CSS pixels;
Inline
The target is at least 22 by 22 CSS pixels when in a sentence or block of text;
User Agent Control
The size of the target is determined by the user agent and is not modified by the author.
Essential
A particular presentation of the target is essential to the information being conveyed;

達成基準 2.5.5 入力メカニズム非依存[レベル AAA]

プラットフォームで提供されている入力モダリティの使用を、ウェブコンテンツが制限しない。ただし、その制限が必要不可欠な場合、コンテンツのセキュリティのために必要な場合、又は個別のユーザ設定に必要な場合は例外とする。

達成基準 2.5.5の原文

2.5.4 Target Size (Enhanced)

Web content does not restrict use of input modalities available on a platform except where the restriction is essential, required to ensure the security of the content, or required to respect user settings.

関連セクションの日本語訳

「達成基準 1.3.4 共通した(or 一般的な)目的の特定[レベル AA]」からリンクされている関連セクション「7. Common Purposes for User Interface Components」の日本語訳です。

7. ユーザーインタフェース コンポーネントの共通した(一般的な)目的

このセクションには、ユーザーインタフェース コンポーネントの共通した(一般的な)目的のリストが含まれている。以下の用語は、使用しなければならないキーワードではなく、ウェブページのタクソノミー(分類体系)において使用すべき目的を示すものである。コンテンツ制作者は、該当する分類を用いてコントロールを適宜マークアップして、セマンティックな目的を示すべきである。これにより、ユーザーエージェント及び支援技術がパーソナライズされた提示方法を適用できるようになり、その結果、より多くの人がコンテンツを理解して使用できるようになる。

「WCAG 2.1」編集者注
以下の具体的なリスト項目は、現在も改良中である。ワーキンググループでは、このリストについてのコメントを募集している。この議論の成り行きに関心がある方は、コントロールの目的の問題点に関する議論をフォローしてほしい。

7.1 コントロールの共通した(一般的な)目的

以下の項目は、意図されたリンク先や動作を示している。
【訳注】[AT RISK]は、今後の検討によっては削除される可能性があることを意味する。

  • Table of Contents – 目次を表示・提示する
  • Next – シリーズ内の次のアイテムを表示・提示する(例: 書籍の次のページ、次の記事)
  • Previous – シリーズ内の前のアイテムを表示・提示する
  • Reply – 現在のアイテムに返信する(例: 電子メール)
  • Forward – 現在のアイテムを転送する(例: 電子メール)
  • Inbox – 受信トレイを表示する(例: 電子メールアプリケーションの受信トレイ)
  • Sent items – 送信済みアイテムを表示する(例: 電子メールアプリケーションの送信済みアイテムのフォルダ)
  • Sign in – サインインやログインのページまたはプロセスを表示・提示する
  • Sign out – 現在のウェブサイトまたはアプリケーションからサインアウトする
  • Sign up – ウェブサイトやアプリケーションに登録する
  • Upload – サーバにファイルをアップロードする
  • Refresh – データを手動で更新する、または画面上のコンテンツを更新する
  • Print – 現在のページ、選択、またはアイテムを印刷する
  • Reset – ページ上のコントロールをすべて初期値にリセットする
  • Comment – コメントを送信する [AT RISK]
  • Settings – 設定やオプションを表示・編集する
  • Increase – 設定の値を増加する
  • Decrease – 設定の値を減少する
  • Remove – アイテムを削除する
  • Checkout – 購入プロセスに進む
  • Open – 既存のファイルやアイテムを開く
  • Compose – アイテムを新規作成する(例: 電子メール、オンライン文書)
  • Edit – 現在のアイテム、選択、または現在の場所にあるアイテムを編集する
  • Cut – 選択したアイテムやテキストを削除して、デバイスのクリップボードにコピーする
  • Copy – 選択したアイテムやテキストをデバイスのクリップボードにコピーする
  • Paste – 現在のコンテキストにおけるデバイスのクリップボードのコンテンツを追加する
  • Save – 現在のコンテンツを保存する
  • Submit – ユーザー入力のプロセスを完了する
  • Delete – 関連するアイテムまたは現在のアイテムを削除する
  • Undo – 最後の変更を加える前の状態に戻す
  • Cancel – ダイアログや類似のコンテナを閉じ、保存していない変更をすべて破棄する
  • Home – ウェブサイトやアプリケーションの初期ページまたはメインページを表示する
  • Contact us – コンテンツ保有者や作成者の連絡先情報を表示する [AT RISK]
  • About us – コンテンツ保有者や作成者の情報を表示する [AT RISK]
  • Our phone – 電話番号 [AT RISK]
  • Our email – 連絡先の電子メール [AT RISK]
  • Site map – ウェブサイトのページのリストを含んだコンテンツを表示する
  • Help – ヘルプ機能、サポート、または説明を表示する
  • Chat help – チャットインタフェースを介して提供されるヘルプ機能を表示する
  • Services – コンテンツプロバイダから提供されているサービスを表示する [AT RISK]
  • Products – コンテンツプロバイダから提供されている製品を表示する [AT RISK]
  • Terms – 利用規約を表示する [AT RISK]
  • Language – 言語のオプションを管理する
  • Social – ソーシャルメディア上のコンテンツプロバイダを表示する [AT RISK]
  • My profile – ユーザーのプロフィールページを表示する [AT RISK]

7.2 入力コントロールの共通した(一般的な)目的

以下の入力コントロールの目的は、コンテンツのユーザに関することを意図しており、そのユーザー本人についての情報のみを対象としている。

「WCAG 2.1」編集者注
ワーキンググループでは、コントロールの目的を示す用語と定義を、コンテンツのユーザーに関することのみを対象にしたいと考えている。上記の但し書きは、これを明確にするために追加された。しかし、これでは十分ではなく、それぞれの定義でこれを明確にすることによって、コンテンツ制作者が必要以上に多くのコントロールをサポートしなければならないと考えることのないようにすべきだとの懸念も寄せられている。ワーキンググループでは、この問題点についてのコメントを募集している。
  • Name – ユーザーの名前情報を取り扱うために使用する入力(例: 姓、名、称号)
  • Professional Title – 役職名(例: ソフトウェアエンジニア、上級副社長、専務取締役)
  • Organization – ユーザーに関係する会社名
  • Address – 住所情報を取り扱うために使用する入力(例: 町名・番地、市町村、都道府県、郵便番号)
  • Country Code – 国名の省略コード
  • Country Name – 国名
  • Credit Card – クレジットカードの支払情報を取り扱うために使用する入力
  • Name on Credit Card – 支払手段で使われている氏名
  • Credit Card – クレジットカードの支払情報を取り扱うために使用する入力
  • Credit Card Number – 支払手段を特定するコード(例: クレジットカードの番号)
  • Credit Card Expiration Date – 支払手段の有効期限
  • Credit Card Security Code – 支払手段のセキュリティコード(CSC、CVC、CVV、SPC、CCID などとも呼ばれる)
  • Credit Card Type – 支払手段の種類(例: Visa)
  • Transaction Currency – 決済に使用する通貨
  • Transaction Amount – ユーザーが決済を約束する金額(例: 入札金額、販売価格)
  • Language – 希望する言語
  • Birthdate – 生年月日情報
  • URL – ユーザーに関係するホームページや他のウェブページ
  • Photo – ユーザーに関係する社員、アイコン、他の画像
  • Telephone Number – 電話番号情報を取り扱うために使用する入力
  • Email Address – 電子メールアドレス

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2017年12月27日