Webアクセシビリティを確保するメリット

Webコンテンツのアクセシビリティを確保することによって、どのようなメリットがあるのでしょうか? ユーザビリティの向上につながる以外にも、次のようなメリットが挙げられます。

Webアクセシビリティを確保することによって…

より多くのユーザーが利用できる

Webコンテンツを利用するときのユーザーが「○○できない」、「○○しづらい」が解消されることにより、より多くのユーザーがより快適に利用できるようになります。
  • まざまな支援技術を使用している障害のある人
  • 加齢により視覚や聴覚などの能力が低下している中高年やシニアの人
  • 一時的に普段とは異なる状況で利用しなければならない人

多様化する利用環境に対応できる

多種多様なユーザーの利用環境をより多くサポートすることができます。

  • デバイス:PC、携帯、スマートフォン、タブレット端末、テレビ、ゲーム端末、家電、クルマ……
  • OS:Windows、Mac、Android、iOS、……
  • ブラウザ:Internet Explorer、Google Chrome、Firefox、Safari、Opera、……
  • 操作手段:マウス、キーボード、タッチ、音声、……
  • 支援技術:スクリーンリーダー、点字ディスプレイ、画面拡大機能、色反転機能、オンスクリーン・キーボード、マウス・エミュレータ、スイッチ、など

場面や状況を選ばず、より快適な体験を提供できる

スマートフォンやタブレット端末の普及により、Webコンテンツは場所を選ばずに利用できるようになりました。それによって、ユーザーの利用シーンも多様化しています。アクセシビリティを確保することによって、ユーザーが利用したいときに、より快適に利用しやすくなります。

  • 屋内:家、学校、職場、図書館、カフェ、レストラン、居酒屋、……
  • 屋外:日なた、日陰、公園、路上、……
  • 移動中:電車、地下鉄、バス、タクシー、駅のホーム、待合室、空港、……
  • その他:災害などによる緊急時や避難所 など

顧客満足度とイメージの向上につながる

もう何年も前の話ですが、「あ、この瞬間が○○○だね」というクルマのテレビCMがありました。ユーザーにとって重要なのは、快適に利用できるかどうかです。ユーザーはアクセシビリティが確保されているかどうかは意識していません。

もともと、アクセシビリティが確保されているかどうかは、見た目ではよくわからないものです。しかし、アクセシビリティを確保することによってユーザビリティも向上し、結果としてそれがユーザーの満足度を高めることになり、ユーザーはより良い印象を抱くようになります。

Webコンテンツの品質が向上する

ユーザビリティとは異なり、アクセシビリティにはどのようなWebコンテンツであっても同じように適用できるガイドラインがあります。例えば、『JIS X 8341-3:2016』の基準を用いることによって、より明確な品質基準によるWebコンテンツの制作や開発、運用も可能になります。

2016年3月に公示された『JIS X 8341-3:2016』は、世界標準であるW3C勧告『WCAG 2.0』や国際規格『ISO/IEC 40500:2012』と同じ内容になりました。これにより、国・地域・言語が異なる場合でも、グローバル企業ではガイドラインの運用やWebコンテンツの品質管理がより容易になっています。

標準規格への対応による信頼感と安心感を提供できる

アクセシビリティの確保をさらに一歩進めて、例えば日本工業規格の『JIS X 8341-3:2016』への対応方針を明確にしたり、『JIS X 8341-3:2016』に基づいた試験結果を公開したりすれば、ユーザーに信頼感や安心感を与えることができます。

方針や試験結果は、一度公開したらそれで終わりではありません。定期的に見直しを行ってアップデートしていくことによって、ユーザーの信頼感と安心感をさらに高めることができます。

製品の国際競争力が向上する

諸外国ではWebアクセシビリティの確保が法律によって義務付けられています。例えば、アクセシビリティを確保していない製品(例:Webアプリケーション)は、日本市場ではともかく、諸外国の市場では競合製品よりも品質が劣っていると評価されてしまう可能性もあります。諸外国では、政府機関の調達基準の一つとしてアクセシビリティ確保が挙げられていることがよくあります。

また、逆に海外から競合製品が日本市場に参入してきたとき、アクセシビリティを確保していれば、製品の基本的な品質で劣ることはないといえます。

社会的な責任を果たすことができる

企業のWebサイトなどでは、コンプライアンス(法令遵守)やCSR(企業の社会的責任)という視点から、アクセシビリティの確保に取り組むこともあります。

国連の『障害者権利条約』をきっかけに世界各国で法整備が進む中、日本でも2016年4月からの『障害者差別解消法』の施行によって、情報アクセシビリティの確保が求められています。もし利用者からWebコンテンツに対する改善要求があれば、個別の対応を求められることになります。これを「合理的配慮」といいますが、公的機関には法定義務、民間の事業者には努力義務が課せられており、法的な責任を問われる可能性もあるのです。

また、提供している情報やサービスによっては、災害などの緊急時にも大きな差が生じます。2011年の東日本大震災のとき、国、自治体や企業がWebサイトを用いてさまざまな情報を被災地に向けて配信しました。しかし、中にはWebページやPDFファイルがアクセシブルではなかったために、障害のある人をはじめ、被災者の利用環境によってはその情報を取得できないケースもあったようです。普段は表立って問題があるようには見えなくても、欠陥住宅のように何かあったときには露呈されます。